韓国人テノール歌手

  • 本日の『朝日新聞』日刊(2007年5月13日)「ひと」欄(文 大波綾)より。

甲状腺がんから復帰を目指す韓国人テノール歌手
  ベー・チェチョルさん(37)


 目の前が真っ暗になった。ドイツの劇場で公演中の05年9月、声がかすれて降板した。甲状腺がんだった。声をなくせば、オペラ歌手ではいられない。「でも神様は第二の声を与えて下さった。歌手であり続けるのは私の使命なんです。」
 アジア人の活躍が難しい欧州の歌劇場で主役を射止めてきたテノールだ。すぐに現地でがんの組織を取り除いたが、そのとき、声帯をつかさどる神経も切られてしまった。予期せぬことだった。
 がんの再発はないと言われた。体は元気なのに声だけが出ない。
 ふたたび舞台に立つために、音声外科で世界有数の技術を持つ一色信彦・京都大学名誉教授に声の再生を委ねた。03年に来日してからファンが多い日本で、手術のための支援金が集まった。昨年4月、甲状腺軟骨形成という難手術に成功し、復帰に望みがつながった。
 全盛期の9割まで声が出る日もあるが、高音がまだ戻らない。ドイツの手術で首の筋肉をそがれ、横隔膜の神経も切って右の肺が動かない。片肺だけで、筋トレや呼吸法の訓練を積む。
 昨年11月に日本で発売された初アルバムの売上金を、今後の治療と訓練に充てる。6月で切れるはずだったドイツの歌劇場との契約が来年まで延びた。それまでの復帰を目標に据えた。
 「多くの人に支えていただいた。感謝の気持ちを忘れない歌手になる」

  • ベー氏の場合、
    • 甲状腺摘出の際に、右側の反回神経(声帯をコントロールする神経)を切断せざるを得なかった」
    • 「会話の声もひどい喉風邪を引いているときのような声」「全く歌声にはなりません」
    • 反回神経の声帯の片側は完全に麻痺している状態」
    • 「声帯は麻痺しているものの、極めて健康な良い常態」
  • とのこと(いずれもヴォイスファクトリーHPより)。
  • 現在では、すでに一色医師による手術を済まされている。
  • 私の場合、
    • 甲状腺右側については、反回神経をずらして手術を行なう必要があったため、そのときに多少触った。しかし、神経そのものはあくまでも切断していない。
    • 結果、「不完全麻痺」(という名称だったと思う*1)が現在も残っている。声が出るには出るがやや出にくい(かすれ気味)。
    • ただし、この麻痺は回復する余地の大きいものとのこと。
    • また、現在声そのものが出にくいもう一つの要因として、気管切開の『穴』がある。声帯麻痺とは別で、穴から呼気が漏れるため、会話時に充分な声量が保てない。このことは、穴が閉鎖すればそれだけのこと。
  • 明日の外来の際、また少し確認してみようと思う。
  • もしかしたらいずれ機会を見て、一色クリニックにも行ってみるかもしれない。

*1:カルテを覗いた。